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2007年9月25日 (火)

家族と患者の間で

先日私の病棟に転棟してきた患者さん。

86歳の女性、肩の手術を受け、その後腎不全になり、その日を含めて3日間で尿量はたったの20ml。
腎不全に加え心不全も起こしており、非常に危ない状態だと一目でわかる。
お通じも6日間出ていなく、どこもかしこもパンパンになっていた。

NFR(蘇生術拒否)+NFMet(急変しても積極的な治療はしない)の人だったので、呼吸が浅くなろうと血圧が取れなくなろうと、何もできない。

私達としてはできるだけ患者さんの苦痛を軽減することだけに努めるしかない。

患者さんが転棟してきて、はじめにバイタル(熱、血圧、脈、呼吸数、血中酸素飽和度測定など)を測るが、その時点で呼吸が下顎呼吸(下あごを動かして呼吸する)になっており、意識も朦朧としている、もしかして逝っちゃうかな?と言う状態。

それを察したのか、突然回りに付き添って一緒に転棟してきた家族が一斉に彼女の肩をつかみ揺らすわ、顔を両手で挟みゆすって大声を張り上げ「行っちゃ駄目!!戻ってきて~~!!!」と意識を取り戻させようとする。

「Drを呼んで!どこにいるのDrは?何とかしてちょうだい!!」とパニック状態な家族・・・。

え? でもNFR+NFMetで同意書にもサインが・・・。

しかも、その日は日曜日の夕方で当直Dr以外いない。

心構えも何も家族はまだ希望を持っている。

転棟してきたばかりで、患者の状態もよくわからず(申し送られた事意外)、ましてや家族関係なんてとうてい把握できるわけがない。

ちょうど、担当Drがいて、再び家族に説明にあたってくれた。

Drもしぶしぶ利尿剤と抗生剤を投与するが、リアクションは0・・・。

尿量も0。

(全身が浮腫んでいて)血圧も取れないし、脈も取れない。

呼吸状態はいぜん悪い。

私のつたない英語力では家族をなだめる事ができず、シフトコーディネーターに応援を頼んだ。

家族はその後落ち着き、ベッドの周りで静かに、時には患者さんの覚醒させようと頬を叩き、患者さんの最期を見守った。

なんでこういう状態の人を無理やり転棟させるかな?

もう少し時間があれば、こちらとしても家族にももっといい導き方ができたかもしれないのに。

日本でもそうだったが、家族とのかかわりはすごく難しい。

英語力に加えカルチャーやバックグラウンド、宗教が多彩な事から、家族とのかかわりも相当な努力を要する。

ましてや、患者さんの最期となると家族の受け入れ方も違うし、これが正解!と言う物はない。

家族が患者さんを失いたくない気持ちは痛いほどわかる、それと同時にこれ以上患者さんの苦痛を伸ばさずにそっと逝かせてあげましょうよと言う気持ちもある。

「患者さんの苦痛」と「家族の苦痛」という壁の間で私は何が出来るだろうか?

残された課題は大きい。

  けい

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コメント

6年前に逝った夫の爺ちゃん(享年99)
介護に関するあらゆることの統一見解が親戚内でなされておらず、爺ちゃんが悪くなるたびに右往左往。同居していた姑はそれに振り回された挙句鬱病発症。まもなくアルツ舅の介護が始まって鬱病悪化。
もうね・・・ワタシも凹むよ。
せめて、身内がひとつになって家族を看取ってやりたいものだね。
アルツ舅の介護を巡っても「恥ずかしい」から「外に出さないで」と舅・義弟夫婦。
でもワタシは爺ちゃんを連れまわしてる。北欧の杜行って散歩したり、森吉山のゴンドラ乗せたり。別に「恥ずかしくない」からそんなの気にしない、のワタシと夫。
そんな周りのゴタゴタなんて知る由もなく、
爺ちゃんはお地蔵さんのように静かにたたずんでる。先日のジョー婆ちゃんなんてかわいいじゃん!内容はともあれ会話できるっていうのは羨ましいな~
お地蔵さんに話かけても「知らね!」だけなんだもん涙涙涙

投稿: meiko | 2007年9月26日 (水) 12時14分

なかなか大変な状況に遭遇しましたね。ご苦労様でした。こういう状況でベストな看護をするのは本当に難しいと思います。短時間では例え日本で日本語が流暢に話せたとしても家族との信頼関係を築くのはかなり難しいから、海外だと余計難しい。気の利いた声かけをしたいのに英語が出てこないときハピは無念きわまりないです。でもきっといろんな経験しながら成長して行くのかな、とも思います。お互い頑張りましょうね。

投稿: ハピ | 2007年9月26日 (水) 18時10分

こうなる前に、家族が患者さんに会ってあげていたらよかったのにネ

投稿: tisane | 2007年9月26日 (水) 22時12分

<Meikoさん>
コメントありがとうございます!
人間いつ何があるかわからないですからね、普段から家族がこういう事態になったらどうするかを健康なときから話し合っておくといいかもしれません。まあ、なかなか話す機会もないかもしれませんが、少なくても「自分の時はこうして」と言う希望があれば、家族に伝えておく事が大切かもしれません。
日本ではまだまだ本人の意思が取れなくなると家族次第で治療方針が決まりますからね。
最悪なパターンも数々見てきましたよ。
その度に難しいな~と思います。
爺ちゃんはメイコさんに介護してもらって、色々な刺激を受けて、感謝していると思いますよ。あんまり頑張りすぎないでくださいね。
けい

投稿: kay | 2007年9月28日 (金) 08時46分

<ハピさん>
コメントありがとうございます!
お仕事順調ですか?
私の病棟は一般内科なので、経過が長い人が多いのですが、こういう方も中にはいます。
本当にやるせないです。
こうやって経験地が増えていくのですね。
けい

投稿: kay | 2007年9月28日 (金) 08時51分

<Tisaneさん>
コメントありがとうございます!
この患者さんの場合、肩の手術を受けてそのまますぐに帰れると思っていたのでしょう。
まさかこんなに悪くなるとは思ってもいなかったのだと思います。
人間いつどうなるかわからないものですね。
だから、日ごろから感謝の気持ちは忘れずに言葉にして行こうと思います。
けい

投稿: kay | 2007年9月28日 (金) 08時54分

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