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2016年4月27日 (水)

旅立ち

患者さんの最期を看取るのもナースの仕事。
20年近くナースとして働き、たくさんの患者さんを看取ってきた。
患者さんの状態を見て、「ぁあ、良くないな。今夜持つかな?」なんて思う状況もある。
それでも、誰にも何時逝ってしまうかなんてわからない。
この前の夜勤での話。
受け持ち患者のAさん93歳は「急変時は積極的な治療はしない」状態だったが、緩和ケアまでには至ってなかった。
受け持って2日目の夜、午後勤務のナースの申し送りで「結構危ない」状態だと言われた。
他の患者さん達の申し送りも済んでAさんの様子を見に行くと、申し送られた通り非常に「危ない」状態なのが見て取れた。
浅い呼吸、うつろに開かれた眼、冷え切った体。。。
急いでリーダーに報告。
Aさんは4人部屋だったので、個室に移せないか?とリーダーに申し出るが移せる部屋がない。
そして、一つの疑問が浮かんだ
「この状態をAさんの家族は知っているのだろうか?」
申し送りにも、家族に状態が悪化していると伝えたと言うことはなかったし、記録にも残っていたんかった。
時間はまだ10時前、家族に電話してAさんの状態が思わしくないことを伝えることにした。
何年たってもこの電話だけには慣れない。
Aさんの親族・息子の携帯に電話する。
何回か呼び出し音が鳴って息子が出た。
「もしもし、SCG病院のKayですが。Aさんの息子さんですか?」
「もしもし? ぁ、はい。そうです。 ぁちょっと待ってください。周りがうるさくてよく聞こえないので今外に出ます。      はい、すいません。 今、娘の結婚式の披露宴でして。」
  披露宴・・・・。
最悪だ、そんな席にいる人にこんな報告をしなければならないなんて。。。
私 「すいません。お母さまのAさんの事なのですが。状態がすごく悪くなっていることをお伝えしたくて。」
Aさんの息子「そうですか。 母の病状は把握してますし、覚悟もできてます。朝まで持ちそうですか?」
私 「朝まで持つかどうかは、わかりません。誰にも何時間後に亡くなるなどとは言えないので・・・。 ただ、言いにくいですが、ものすごく危険な状態ですと言うことをお伝えしたくて。」
Aさんの息子「わかりました。電話してくださってありがとうございます。これから、家内と一緒に伺います。」
私は業務に戻った。
Aさんはすごく浅いながらもまだ呼吸は確認できた。
電話してから1時間後、Aさんの息子さんと奥さんが面会に来てくれた。
お部屋に通した時、Aさんの呼吸は止まっているように見えた。
息子さんと奥さんは「? もしかして間に合わなかった?」と私を見る。
たぶん止まっていたんだと思うけど、わずかにのどが動くのが見えた。
反射だったのかもしれない。
聴診器で心音を確認するが、何も聞こえなかった。
「先生をお呼びしますね。」と言って、当直Drを呼んだ。
Aさんは亡くなって、家族も引き上げていった。
切なくて、やりきれなかった。
朝に日勤のナースが出勤してくる。
スタッフルームでAさんが昨夜亡くなった話をしたら、その前の日に勤務していたナースが「Aさんって、あの花嫁と花婿がウェディングドレスで病室まで面会に来てた人?」
と聞いてきた。
どうも、Aさんのお孫さんが結婚式の衣装のままAさんの病室を訪れていたらしい。
それで、わかった。
Aさんは、逝く準備ができたのだ。
お孫さんの花嫁衣装も見れたし、Aさんは幸せだったのだと思う。
時に何かが死にゆく人を引き留めたりする。
それは、愛する人だったり、会いたい人だったり、心配事だったり、不安だったり。
Aさんは解き放されてまた次の旅へと旅立ったのだ。
お孫さんの花嫁姿、Aさんの目にはまぶしく映ったに違いない。
Aさんのご冥福をお祈りいたします。
けい
 
 

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